好きって言えない!30代の少女漫画シネマレビュー

毎週土曜日、更新!レクター&クラリスによる30本の胸キュンレビューです

第10回「天然コケッコー」を30代男女が勝手にレビュー

監督 山下敦弘 脚本 渡辺あや
主演 夏帆 岡田将生
配給 アスミック・エース 公開 2007年
クラリスのレビュー

何度でも戻りたくなる、あの子達のところに
 山下監督の初期作品を見たとき、なんて面白いんだとびっくりした点が2つありました。ひとつは人に対する意地悪な目線、もうひとつは1秒違えば成立しない会話や動きの面白さ。前者は、どうしようもなくダメな人や怪物のような性格の人って、身近にいると困るけど観察対象としては最高に面白いよねってニヤニヤしている感じ。「マイ・バック・ページ」の松山ケンイチにそれが引き継がれていて、あの人は怪物+人たらしで、ニヤニヤどころか恐怖だったわけですが。
 「天然コケッコー」は後者の「監督の頭の中にある正解を、どうやって演出しているのだろうか」と不思議でたまらない面白さが魅力。少女漫画原作という縛りでこれまでの9作と並べて見ると、恋の割合少な目。そうそう、主人公が恋をしているからといって、好きとか好きじゃないとかどうでもいいことばっかり言わなくていいのよ。子ども・田舎の純朴さが可愛くて愛しい。「味園ユニバース」は私の好きな2点があまりなかったので新作「オーバーフェンス」が楽しみです。

胸キュン度 60% 恋というより、あの世界に生きていたかもしれない中学生の私を想像してキュンとなる
共感度 80% 転校生の男の子がかっこよくて何考えてるのか分からない感じだったら、それは好きになる
寸止めドキドキ度 0% どこかで道が分かれて、大切な思い出として永遠に宝箱に入れておくのでもいいな
山あり谷あり度 60% ほぼ日常ですが、子どもにとったらそれが全て。東京の存在が大きな山
俳優の魅力 70% 子ども達の自然さが魅力的


レクターのレビュー

松ヶ根乱射事件』とのセットで鑑賞ください
「強者による弱者の捕食」というテーマを違うベクトルから描いた『ジュラシック・パーク』と『シンドラーのリスト』。スピルバーグは同年にこの二本を公開した。映画作家が固定されたテーマを一貫して描き続ける生き物だとすれば、多くの映画作家はこのような双子じみた作品を短期間で残しがちだ。山下敦弘にとっては『天然コケッコー』と『松ヶ根乱射事件』がそうだったのだろう。「田舎の生活」をそれぞれに描いた二本が同年に公開されたのは、運命じみた一年だったとしか言いようが無い。内容はといえば「光と影」、「健全と不健全」、「無邪気と邪気」・・・。それは偽善とか偽悪とかではない。同じ場所のどこに焦点を定めるかで、物語とは形を変えてしまうのだと実感させられた。個人的な好みでいえば、より陰部に迫った『松ヶ根~』のほうが遥かに好みだが、だからといって『天然コケッコー』の価値が下がるわけではない。これから鑑賞される方々には是非とも、二本揃って出の体験を望む。

胸キュン度 5% 眩しすぎて胸キュンなどない
共感度 5% 田舎を美化しすぎではあるので
寸止めドキドキ度 10% そういうものでもない
山あり谷あり度 10% それがないのが良いが、ダメな人はダメだろう
俳優の魅力 60% 実は脇のベテラン陣がものすごく良い

映画「天然コケッコー」公式サイト

www.youtube.com